ブックタイトルWith you Vol.35

ページ
13/20

このページは With you Vol.35 の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

With you Vol.35

私の隣の母が、何やらブツブツ言いながら太ももの上で手を動かしています。不安になって「何してるん?」と尋ねると、「あれを見ながら、字を書いてるんや」との答え。「あれ」とは高速道路上の案内標識、インターチェンジやサービスエリアの名前を読み上げながら、文字をなぞっていたのです。「頭を働かしておかんと、あかんやろ」と言う顔は、ちょっと得意そうでした。なじ大教会に着くと、昔馴染みの方々が次々とあいさつに来て下さり、声を上げて喜んでいました。奉告祭そのものも、もちろんうれしく、心をこめて参拝させて頂きましたが、何より、この慶事に生き生きとしている母や信者さん達の姿がうれしく、忘れられないバス団参となりました。〝父の思い?を知りたい〝生き生き?そう言葉にした時、昨年来、「がん相談支援センター」で相談を受けているご家族のことが思い起こされました。最初に相談にみえたのは、二十歳前の娘さんでした。前年、お父さんにがんが見つかり、判明した時には、既に広範囲に広がっていて摘出は難しく、通院による抗がん剤治療を続けてきました。相談は「最初、余命六ヵ月と言われたのに、父は十ヵ月が過ぎた今も頑張って生きている。その奇跡に感謝しながら、今私にできることをしてあげたいと思っている。でも、父はあまり自分の思いを言う人ではないので、その本心が知りたい」というものでした。薬の副作用のつらさからか「父は『このまま抗がん剤治療を続けると、体によくないのではないか』と言い、一方で母は『抗がん剤を止めると、医療機関から見放され、命が縮むので続けてほしい』と言っているんです」とのこと。そこで娘さんが、主治医の説明の折に「抗がん剤を入れる間隔を空けるのはどうでしょうか。体に優しい方法はないの」と尋ねると、「副作用が強い場合は間隔を空けることもあるにはあるが、薬が効いているので、もう少し考えさせて」と言われたそうです。また、抗がん剤治療を受けて二日間横になっているお父さんに、お母さんが「寝てばかりいないで、外にでも出たらどう」と言ったところ、普段は声を荒らげることなどないお父さんが27